ももたろう |
桃太郎 |
冒頭文
一 むかし、むかし、大むかし、ある深い山の奥に大きい桃(もも)の木が一本あった。大きいとだけではいい足りないかも知れない。この桃の枝は雲の上にひろがり、この桃の根は大地(だいち)の底の黄泉(よみ)の国にさえ及んでいた。何でも天地開闢(かいびゃく)の頃(ころ)おい、伊弉諾(いざなぎ)の尊(みこと)は黄最津平阪(よもつひらさか)に八(やっ)つの雷(いかずち)を却(しりぞ)けるため、桃の実(み
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日 夏期特別号」1924(大正13)年7月
底本
- 芥川龍之介全集5
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年2月24日