ながさきしょうひん |
長崎小品 |
冒頭文
薄暗き硝子(ガラス)戸棚の中。絵画、陶器、唐皮(からかは)、更緲(さらさ)、牙彫(げぼり)、鋳金(ちうきん)等(とう)種々の異国関係史料、処狭きまでに置き並べたるを見る。初夏(しよか)の午後。遙にちやるめらの音聞ゆ。 久しき沈黙の後(のち)、司馬江漢(しばかうかん)筆(ひつ)の蘭人、突然悲しげに歎息す。 古伊万里(こいまり)の茶碗に描(ゑが)かれたる甲比丹(かぴたん)、(蘭人を顧み
文字遣い
新字旧仮名
初出
「サンデー毎日」1922(大正11)年6月
底本
- 芥川龍之介作品集第三巻
- 昭和出版社
- 1965(昭和40)年12月20日