おんなけいず
婦系図

冒頭文

鯛、比目魚       一 素顔に口紅で美(うつくし)いから、その色に紛(まが)うけれども、可愛い音(ね)は、唇が鳴るのではない。お蔦(つた)は、皓歯(しらは)に酸漿(ほおずき)を含んでいる。…… 「早瀬の細君(レコ)はちょうど(二十(はたち))と見えるが三だとサ、その年紀(とし)で酸漿を鳴らすんだもの、大概素性も知れたもんだ、」と四辺(あたり)近所は官員(つとめにん)の多い、屋敷町

文字遣い

新字新仮名

初出

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

底本

  • 泉鏡花集成12
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1997(平成9)年1月23日