のろまにんぎょう
野呂松人形

冒頭文

野呂松人形(のろまにんぎょう)を使うから、見に来ないかと云う招待が突然来た。招待してくれたのは、知らない人である。が、文面で、その人が、僕の友人の知人だと云う事がわかった。「K氏も御出(おいで)の事と存じ候えば」とか何とか、書いてある。Kが、僕の友人である事は云うまでもない。——僕は、ともかくも、招待に応ずる事にした。 野呂松人形と云うものが、どんなものかと云う事は、その日になって、Kの

文字遣い

新字新仮名

初出

「人文」1916(大正5)年8月

底本

  • 芥川龍之介全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年9月24日