みっつのたから
三つの宝

冒頭文

一 森の中。三人の盗人(ぬすびと)が宝を争っている。宝とは一飛びに千里飛ぶ長靴(ながぐつ)、着れば姿の隠れるマントル、鉄でもまっ二(ぷた)つに切れる剣(けん)——ただしいずれも見たところは、古道具らしい物ばかりである。 第一の盗人 そのマントルをこっちへよこせ。 第二の盗人 余計(よけい)な事を云うな。その剣こそこっちへよこせ。——おや、おれの長靴を盗んだな。 第三の盗

文字遣い

新字新仮名

初出

「良婦之友」1922(大正11)年2月

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日