カフエ 僕は或カフエの隅に半熟の卵を食べてゐた。するとぼんやりした人が一人、僕のテエブルに腰をおろした。僕は驚いてその人をながめた。その人は妙にどろりとした、薄い生海苔(なまのり)の洋服を着てゐた。 虹 僕はいつも煤(すす)の降る工廠(こうしやう)の裏を歩いてゐた。どんより曇つた工廠の空には虹が一すぢ消えかかつてゐた。僕は踵(かかと)を擡(もた)げるやうにし、ちよつと