アヘン
鴉片

冒頭文

クロオド・フアレエルの作品を始めて日本に紹介したのは多分堀口大学氏であらう。僕はもう六七年前に「三田文学」の為に同氏の訳した「キツネ」艦の話を覚えてゐる。 「キツネ」艦の話は勿論(もちろん)、フアレエルの作品に染(し)みてゐるものは東洋の鴉片(アヘン)の煙である。僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた。尤(もつと)もこの「静

文字遣い

新字旧仮名

初出

「世界」1926(大正15)年11月

底本

  • 芥川龍之介全集 第十三巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年11月8日