おぎん
おぎん

冒頭文

元和(げんな)か、寛永(かんえい)か、とにかく遠い昔である。 天主(てんしゅ)のおん教を奉ずるものは、その頃でももう見つかり次第、火炙(ひあぶ)りや磔(はりつけ)に遇(あ)わされていた。しかし迫害が烈しいだけに、「万事にかない給うおん主(あるじ)」も、その頃は一層この国の宗徒(しゅうと)に、あらたかな御加護(おんかご)を加えられたらしい。長崎(ながさき)あたりの村々には、時々日の暮の光と

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1922(大正11)年9月

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日