しのかいそうせん |
死の快走船 |
冒頭文
一 太い引きずるような波鳴りの聞えるうらさびた田舎道を、小一時聞も馬を進ませつづけていた私達の前方(まえ)には、とうとう岬の、キャプテン深谷(ふかや)邸が見えはじめた。 藍碧の海をへだてて長く突出(つきだ)した緑色の岬の端には、眼の醒めるような一群の白堊館が、折からの日差しに明々(あかあか)と映えあがる。向って左の方に、ひときわ高くあたかも船橋(ブリッジ)のような屋上露台(テラス)
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」博文館、1933(昭和8)年7月号
底本
- とむらい機関車
- 国書刊行会
- 1992(平成4)年5月25日