しょうせつのよげんしゃ |
小説の予言者 |
冒頭文
私の知つた文學者には、豫言者だちの人と、饒舌家型の人とがあつて、著しい相違を見せてゐる。勿論、太宰君は豫言者型といふよりも、豫言者と言つた方が、もつと適切なことを思はせてゐた。 宗教の上の豫言者が、その表現の思ふ壺にはまるまでは、多く饒舌家に類してゐた。太宰君の作品にもさういふ風があつて、語がしきりに空∱Eりしたこともある。だが誰も認めてゐる彼の築いた「異質の文學」は、世間は勿論、彼自身意識して
文字遣い
旧字旧仮名
初出
『「太宰治作品集」内容見本』創元社、1951(昭和26年)2月
底本
- 折口信夫全集 第廿七巻
- 中央公論社
- 1968(昭和43)年1月25日