とむらいきかんしゃ
とむらい機関車

冒頭文

——いや、全く左様ですよ。こう時候がよくなりますと、こうして汽車の旅をするのも、大変楽ですな……時に、貴下(あなた)はどちらまで?……ああ東京ですか。やはり大学も東京の方で……ああ左様ですか。いや結構な事ですな……え、私? ああ私は、ついこの先方(さき)のH市まで参ります。ええそうです。あの機関庫のあるところですよ。 ——これでも私は、二年前までは従業員でしてな。あのH駅の機関庫に、永い間勤めて

文字遣い

新字新仮名

初出

「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年9月号

底本

  • とむらい機関車
  • 国書刊行会
  • 1992(平成4)年5月25日