ぎんざゆうれい |
銀座幽霊 |
冒頭文
一 みち幅三間(げん)とない横町の両側には、いろとりどりの店々が虹のように軒をつらねて、銀座裏の明るい一団を形づくっていた。青いネオンで「カフェ・青蘭(せいらん)」と書かれた、裏露路にしてはかなり大きなその店の前には、恒川(つねかわ)と呼ぶ小綺麗な煙草店があった。二階建で間口二間(けん)足らずの、細々(こまごま)と美しく飾りたてた明るい店で、まるで周囲の店々から零(こぼ)れおちるジャズの音を
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」博文館、1936(昭和11)年10月号
底本
- とむらい機関車
- 国書刊行会
- 1992(平成4)年5月25日