らしょうもん
羅生門

冒頭文

ある日の暮方の事である。一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗(にぬり)の剥(は)げた、大きな円柱(まるばしら)に、蟋蟀(きりぎりす)が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路(すざくおおじ)にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠(いちめがさ)や揉烏帽子(もみえぼし)が、もう二三人はありそ

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国文学」1915(大正4)年11月

底本

  • 芥川龍之介全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年9月24日