また雪の季節がやって来た。雪というと、すぐに私は、可哀そうな浅見三四郎(あさみさんしろう)のことを思い出す。 その頃私は、ずっと北の国の或る町の——仮にH市と呼んでおこう——そのH市の県立女学校で、平凡な国語の教師を勤めていた。浅見三四郎というのは、同じ女学校の英語の教師で、その頃の私の一番親しい友人でもあった。 三四郎の実家は、東京にあった。かなり裕福な商家であったが、次男坊