どうそもんどう |
道祖問答 |
冒頭文
天王寺(てんのうじ)の別当(べっとう)、道命阿闍梨(どうみょうあざり)は、ひとりそっと床をぬけ出すと、経机(きょうづくえ)の前へにじりよって、その上に乗っている法華経(ほけきょう)八の巻(まき)を灯(あかり)の下に繰りひろげた。 切り燈台の火は、花のような丁字(ちょうじ)をむすびながら、明(あかる)く螺鈿(らでん)の経机を照らしている。耳にはいるのは几帳(きちょう)の向うに横になっている
文字遣い
新字新仮名
初出
「大阪朝日新聞夕刊」1917(大正6)年1月
底本
- 芥川龍之介全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年9月24日