さるかにがっせん |
猿蟹合戦 |
冒頭文
蟹(かに)の握り飯を奪った猿(さる)はとうとう蟹に仇(かたき)を取られた。蟹は臼(うす)、蜂(はち)、卵と共に、怨敵(おんてき)の猿を殺したのである。——その話はいまさらしないでも好(よ)い。ただ猿を仕止めた後(のち)、蟹を始め同志のものはどう云う運命に逢着(ほうちゃく)したか、それを話すことは必要である。なぜと云えばお伽噺(とぎばなし)は全然このことは話していない。 いや、話していない
文字遣い
新字新仮名
初出
「婦人公論」1923(大正12)年3月
底本
- 芥川龍之介全集5
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年2月24日