ちのもじ
血の文字

冒頭文

前置(著者の) 「あア〳〵斯(こ)うも警察のお手が能(よ)く行届き、何(ど)うしても逃れぬ事が出来ぬと知(しっ)たら、決して悪事は働かぬ所だッたのに」とは或(ある)罪人が己(おの)れの悪事露見して判事の前に引据(ひきすえ)られし時の懺悔(ざんげ)の言葉なりとかや、余(よ)は此(この)言葉を聞き此記録を書綴る心を起しぬ、此記録を読むものは何人(なんびと)も悪事を働きては間職(ましょく)に合わぬ

文字遣い

新字新仮名

初出

「綾にしき」1892(明治25)年8月

底本

  • 日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集
  • 創元推理文庫、創元社
  • 1984(昭和59)年12月21日