しょうねんじだい
少年時代

冒頭文

私は慶応三年七月、父は二十七歳、母は二十五歳の時に神田の新屋敷というところに生まれたそうです。其頃は家もまだ盛んに暮して居た時分で、畳数の七十余畳もあったそうです。併し世の中が変ろうというところへ生れあわせたので、生れた翌年は上野の戦争がある、危い中を母に負われて浅草の所有地へ立退いたというような騒ぎだったそうです。大層弱い生れつきであって、生れて二十七日目に最早医者に掛ったということです。御維新

文字遣い

新字新仮名

初出

「今世少年 10月増刊号 今世英傑少年時代」1900(明治33)年10月

底本

  • 露伴全集 第29巻
  • 岩波書店
  • 1954(昭和29)年12月4日