とうそう
闘争

冒頭文

K君。 親切な御見舞の手紙うれしく拝見した。僕は全く途方に暮れてしまった。御葬式やら何やら彼(か)やらで、随分忙(せわ)しかったが、やっと二三日手がすいて、がっかりした気持になって居るところへ君の手紙を受取り、涙ぐましいような感激を覚えた。君の言うとおり、毛利先生を失ったわが法医学教室は闇だ。のみならず、毛利先生を失ったT大学は、げっそり寂しくなった。更に、また毛利先生を失った日本の学界

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1929(昭和4)年5月号

底本

  • 日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1984(昭和59)年12月21日