しご
死後

冒頭文

……僕は床へはいっても、何か本を読まないと、寝つかれない習慣を持っている。のみならずいくら本を読んでも、寝つかれないことさえ稀(まれ)ではない。こう言う僕の枕もとにはいつも読書用の電燈だのアダリン錠(じょう)の罎(びん)だのが並んでいる。その晩も僕はふだんのように本を二三冊蚊帳(かや)の中へ持ちこみ、枕もとの電燈を明るくした。 「何時(なんじ)?」 これはとうに一寝入(ひとねい)りした

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1925(大正14)年9月

底本

  • 芥川龍之介全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年3月24日