一 「足音が高いぞ。気付かれてはならん。早くかくれろっ」 突然、鋭い声があがったかと思うと一緒に、バラバラと黒い影が塀(へい)ぎわに平(ひら)みついた。 影は、五つだった。 吸いこまれるように、黒い板塀の中へとけこんだ黒い五つの影は、そのままじっと息をころし乍(なが)ら動かなかった。 チロ、チロと、虫の音(ね)がしみ渡った。 京の夜は、もう秋だった。