そうぎき |
葬儀記 |
冒頭文
離れで電話をかけて、皺(しわ)くちゃになったフロックの袖(そで)を気にしながら、玄関へ来ると、誰(だれ)もいない。客間をのぞいたら、奥さんが誰だか黒の紋付(もんつき)を着た人と話していた。が、そこと書斎との堺(さかい)には、さっきまで柩(ひつぎ)の後ろに立ててあった、白い屏風(びょうぶ)が立っている。どうしたのかと思って、書斎の方へ行くと、入口の所に和辻(わつじ)さんや何かが二、三人かたまっていた
文字遣い
新字新仮名
初出
「新思潮」1917(大正6)年3月
底本
- 羅生門・鼻・芋粥
- 角川文庫、角川書店
- 1950(昭和25)年10月20日