こすいのおんな |
湖水の女 |
冒頭文
一 むかしむかし、或(ある)山の上にさびしい湖水がありました。その近くの村にギンという若ものが母親と二人でくらしていました。 或日(あるひ)ギンが、湖水のそばへ牛をつれていって、草を食べさせていますと、じきそばの水の中に、若い女の人が一人、ふうわりと立って、金(きん)の櫛(くし)で、しずかに髪をすいていました。下にはその顔が鏡にうつしたように、くっきりと水にうつッていました。それは
文字遣い
新字新仮名
初出
「湖水の女」春陽堂、1916(大正5)年12月
底本
- 鈴木三重吉童話集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1996(平成8)年11月18日