しょうねん
少年

冒頭文

一 クリスマス 昨年のクリスマスの午後、堀川保吉(ほりかわやすきち)は須田町(すだちょう)の角(かど)から新橋行(しんばしゆき)の乗合自働車に乗った。彼の席だけはあったものの、自働車の中は不相変(あいかわらず)身動きさえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍(おど)らすことも一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、鍛冶町(かじちょう

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1924(大正13)年4、5月

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日