とうろう
灯籠

冒頭文

言えば言うほど、人は私を信じて呉(く)れません。逢うひと、逢うひと、みんな私を警戒いたします。ただ、なつかしく、顔を見たくて訪ねていっても、なにしに来たというような目つきでもって迎えて呉れます。たまらない思いでございます。 もう、どこへも行きたくなくなりました。すぐちかくのお湯屋へ行くのにも、きっと日暮をえらんでまいります。誰にも顔を見られたくないのです。ま夏のじぶんには、それでも、夕闇

文字遣い

新字新仮名

初出

「若草」1937(昭和12)年10月号

底本

  • きりぎりす
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1974(昭和49)年9月30日、1988(昭和63)年3月15日29刷改版