きりぎりす
きりぎりす

冒頭文

おわかれ致(いた)します。あなたは、嘘(うそ)ばかりついていました。私にも、いけない所が、あるのかも知れません。けれども、私は、私のどこが、いけないのか、わからないの。私も、もう二十四です。このとしになっては、どこがいけないと言われても、私には、もう直す事が出来ません。いちど死んで、キリスト様のように復活でもしない事には、なおりません。自分から死ぬという事は、一ばんの罪悪のような気も致しますから、

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1940(昭和15)年11月号

底本

  • きりぎりす
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1974(昭和49)年9月30日、1988(昭和63)年3月15日29刷改版