へきがんたくはつ ――うまをさえながむるゆきのあしたかな―― |
碧眼托鉢 ――馬をさへ眺むる雪の朝かな―― |
冒頭文
ボオドレエルに就いて 「ボオドレエルに就いて二三枚書く。」 と、こともなげに人々に告げて歩いた。それは、私にとって、ボオドレエルに向っての言葉なき、死ぬるまでの執拗(しつよう)な抵抗のつもりであった。かかる終局の告白を口の端(は)に出しては、もはや、私、かれに就いてなんの書くことがあろう。私の文学生活の始めから、おそらくはまた終りまで、ボオドレエルにだけ、ただ、かれにだけ、聞えよがしの独白
文字遣い
新字新仮名
初出
「日本浪曼派」1936(昭和11)年1月~3月
底本
- 太宰治全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年6月27日