むだい |
無題 |
冒頭文
河原蓬と云う歌めいた響や、邪宗の僧、摩利信乃法師等と云う、如何にも古めかしい呼名が、芥川氏一流の魅力を持って、私の想像を遠い幾百年かの昔に運び去ると同時に、私の心には、又何とも云えないほど、故国の薫りが高まって来た。 人から借りた新聞の小さい切抜きを両手に持って、私は何と云う熱心さで読んで行った事だろう! 遠い海を越えて送られて来た新聞は、「邪宗門」の僅か二三章を齎したに過ない
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日初版
底本
- 宮本百合子全集 第三十巻
- 新日本出版社
- 1986(昭和61)年3月20日