ようぼう |
容貌 |
冒頭文
私の顔は、このごろまた、ひとまわり大きくなったようである。もとから、小さい顔ではなかったが、このごろまた、ひとまわり大きくなった。美男子というものは、顔が小さくきちんとまとまっているものである。顔の非常に大きい美男子というのは、あまり実例が無いように思われる。想像する事も、むずかしい。顔の大きい人は、すべてを素直にあきらめて、「立派」あるいは「荘厳」あるいは「盛観」という事を心掛けるより他に仕様が
文字遣い
新字新仮名
初出
「博浪沙」1941(昭和16)年6月5日発行
底本
- 太宰治全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年6月27日