あきのはんしゃ |
秋の反射 |
冒頭文
一 田舎では何処にでも、一つの村に一人は、馬鹿や村中の厄介で生きている独りものの年寄があるものだ。敷生村では十年ばかり前、善馬鹿という白痴がいた。女子供に面白がられたり可怖がられたりしていたが、池に溺れて或る冬死んだ。それ以来幸なことに白痴は一人も出なかった。尤も、気違いが一人いたが。——三十五になる、村ではハイカラな女であった。彼女は東京に出て、墓地を埋めて建てた家を知らずに借りて住んだ。そこ
文字遣い
新字新仮名
初出
「ウーマンカレント」1926(大正15)年6月号
底本
- 宮本百合子全集 第三十巻
- 新日本出版社
- 1986(昭和61)年3月20日