しょくつう |
食通 |
冒頭文
食通というのは、大食いの事をいうのだと聞いている。私は、いまはそうでも無いけれども、かつて、非常な大食いであった。その時期には、私は自分を非常な食通だとばかり思っていた。友人の檀一雄などに、食通というのは、大食いの事をいうのだと真面目(まじめ)な顔をして教えて、おでんや等で、豆腐、がんもどき、大根、また豆腐というような順序で際限も無く食べて見せると、檀君は眼を丸くして、君は余程の食通だねえ、と言っ
文字遣い
新字新仮名
初出
「博浪沙」1942(昭和17)年1月5日発行
底本
- 太宰治全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年6月27日