げいじゅつぎらい
芸術ぎらい

冒頭文

魯迅の随筆に、「以前、私は情熱を傾けて支那(しな)の社会を攻撃した文章を書いた事がありましたけれども、それも、実は、やっぱりつまらないものでした。支那の社会は、私がそんなに躍起(やっき)となって攻撃している事を、ちっとも知りやしなかったのです。ばかばかしい。」というような文章があって、私はそれを読んでひとりで声を出して笑ってしまった事があるけれども、私が映画に就(つ)いて語る場合も、少しそれと似た

文字遣い

新字新仮名

初出

「映画評論」1944(昭和19)年4月1日発行

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日