ととうについて
徒党について

冒頭文

徒党は、政治である。そうして、政治は、力だそうである。そんなら、徒党も、力という目標を以(もっ)て発明せられた機関かも知れない。しかもその力の、頼みの綱とするところは、やはり「多数」というところにあるらしく思われる。 ところが、政治の場合に於いては、二百票よりも、三百票が絶対の、ほとんど神の審判の前に於けるがごとき勝利にもなるだろうが、文学の場合に於いては少しちがうようにも思われる。

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸時代」1948(昭和23)年4月1日発行

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日