しゅうざんず
秋山図

冒頭文

「——黄大癡(こうたいち)といえば、大癡の秋山図(しゅうざんず)をご覧(らん)になったことがありますか?」 ある秋の夜(よ)、甌香閣(おうこうかく)を訪(たず)ねた王石谷(おうせきこく)は、主人の惲南田(うんなんでん)と茶を啜(すす)りながら、話のついでにこんな問を発した。 「いや、見たことはありません。あなたはご覧になったのですか?」 大癡老人黄公望(こうこうぼう)は、梅道人(

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1921(大正10)年1月

底本

  • 日本文学全集28芥川龍之介集
  • 集英社
  • 1972(昭和47)年9月8日