たびにっきから |
旅日記から |
冒頭文
一 シャンハイ 四月一日 朝のうちには緑色をしていた海がだんだんに黄みを帯びて来ておしまいにはまっ黄色くなってしまった。船の歩みはのろくなった。艫(とも)のほうでは引っ切りなしに測深機を投げて船あしをさぐっている。とうとう船が止まった。推進機でかきまぜた泥水(どろみず)が恐ろしく大きな渦(うず)を作って潮に流されて行く。右舷(うげん)に遠くねずみ色に低い陸地が見える。 日本から根
文字遣い
新字新仮名
初出
「渋柿」1920(大正9)年6月~1921(大正10)年4月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第一巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1947(昭和22)年2月5日、1963(昭和38)年10月16日第28刷改版