トロッコ |
トロツコ |
冒頭文
小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まつたのは、良平(りやうへい)の八つの年だつた。良平は毎日村外(むらはづ)れへ、その工事を見物に行つた。工事を——といつた所が、唯トロツコで土を運搬する——それが面白さに見に行つたのである。 トロツコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇(たたず)んでゐる。トロツコは山を下るのだから、人手を借りずに走つて来る。煽(あふ)るやうに車台が動いたり、土工の袢
文字遣い
新字旧仮名
初出
「大観」1922(大正11)年3月
底本
- 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
- 筑摩書房
- 1968(昭和43)年8月25日