うまのあし
馬の脚

冒頭文

この話の主人公は忍野半三郎(おしのはんざぶろう)と言う男である。生憎(あいにく)大した男ではない。北京(ペキン)の三菱(みつびし)に勤めている三十前後の会社員である。半三郎は商科大学を卒業した後(のち)、二月目(ふたつきめ)に北京へ来ることになった。同僚(どうりょう)や上役(うわやく)の評判は格別善(い)いと言うほどではない。しかしまた悪いと言うほどでもない。まず平々凡々たることは半三郎の風采(ふ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1925(大正14)年1、2月

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日