となんせんせい |
斗南先生 |
冒頭文
一 雲海蒼茫 佐渡ノ洲 郎ヲ思ウテ 一日三秋ノ愁 四十九里 風波悪シ 渡ラント欲スレド 妾ガ身自由ナラズ ははあ、来いとゆたとて行かりょか佐渡へだな、と思った。題を見ると、戯翻竹枝とある。 それは彼の伯父の詩文集であった。伯父は一昨年(昭和五年)の夏死んだ。その遺稿が纏(まと)められて、この春、文求堂から上梓(じょうし)されたのである。清末の碩儒(せきじゅ)で、今は満洲
文字遣い
新字新仮名
初出
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
底本
- 山月記・李陵他九篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1994(平成6)年7月18日