うん |
運 |
冒頭文
目のあらい簾(すだれ)が、入口にぶらさげてあるので、往来の容子(ようす)は仕事場にいても、よく見えた。清水(きよみず)へ通う往来は、さっきから、人通りが絶えない。金鼓(こんく)をかけた法師(ほうし)が通る。壺装束(つぼしょうぞく)をした女が通る。その後(あと)からは、めずらしく、黄牛(あめうし)に曳(ひ)かせた網代車(あじろぐるま)が通った。それが皆、疎(まばら)な蒲(がま)の簾(すだれ)の目を、
文字遣い
新字新仮名
初出
「文章世界」1917(大正6)年1月
底本
- 芥川龍之介全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年9月24日