やぶのなか |
藪の中 |
冒頭文
検非違使(けびいし)に問われたる木樵(きこ)りの物語 さようでございます。あの死骸(しがい)を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝(けさ)いつもの通り、裏山の杉を伐(き)りに参りました。すると山陰(やまかげ)の藪(やぶ)の中に、あの死骸があったのでございます。あった処でございますか? それは山科(やましな)の駅路からは、四五町ほど隔たって居りましょう。竹の中に痩(や)せ杉の交(ま
文字遣い
新字新仮名
初出
「新潮」1922(大正11)年1月
底本
- 芥川龍之介全集4
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年1月27日