やましぎ
山鴫

冒頭文

千八百八十年五月何日かの日暮れ方である。二年ぶりにヤスナヤ・ポリヤナを訪れた Ivan Turgenyef は主(あるじ)の Tolstoi 伯爵と一しよに、ヴアロンカ川の向うの雑木林へ、山鴫(やましぎ)を打ちに出かけて行つた。 鴫打ちの一行には、この二人の翁(おきな)の外にも、まだ若々しさの失せないトルストイ夫人や、犬をつれた子供たちが加はつてゐた。 ヴアロンカ川へ出るまでの

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1921(大正10)年1月

底本

  • 現代日本文學大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日