まといのはなし |
まといの話 |
冒頭文
一 のぼりといふもの 中頃文事にふつゝかであつた武家は、黙つて色々な為事をして置いた。為に、多くの田舎侍の間に、自然に進化して来た事柄は、其固定した時や語原さへ、定かならぬが多い。然るに、軍学者一流の事始めを説きたがるてあひに、其がある時、ある一人のだし抜けの思ひつきによつて、今のまゝの姿をして現れた、ときめられ勝ちであつた。其話に年月日が備はつて居れば居る程、聴き手は咄し手を信用して、互に印判
文字遣い
新字旧仮名
初出
「土俗と伝説 第一巻第三号」1918(大正7)年10月
底本
- 折口信夫全集 2
- 中央公論社
- 1995(平成7)年3月10日