すいせんづきのよっか |
水仙月の四日 |
冒頭文
雪婆(ゆきば)んごは、遠くへ出かけて居(を)りました。 猫(ねこ)のやうな耳をもち、ぼやぼやした灰いろの髪をした雪婆んごは、西の山脈の、ちぢれたぎらぎらの雲を越えて、遠くへでかけてゐたのです。 ひとりの子供が、赤い毛布(けつと)にくるまつて、しきりにカリメラのことを考へながら、大きな象の頭のかたちをした、雪丘の裾(すそ)を、せかせかうちの方へ急いで居りました。 (そら、新
文字遣い
新字旧仮名
初出
「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日
底本
- 宮沢賢治全集8
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年1月28日