こうしじまのもうふ
格子縞の毛布

冒頭文

縮毛(ちぢれげ)のいほは、女中をやめた。 毎日風呂にゆき、ひびがすっかりなおると、彼女は銘仙の着物を着て、自分のように他処でまだ女中をしている国の友達や、屑屋をしている親戚を訪問して歩いた。彼女の赤い頬ぺたや、黒くてちぢれた髪に、青々した縞の銘仙着物はぱっとよく似合った。手袋も、襟巻も、そう大して古くはないのをつけ、誰もが急しそうにしている暮に、 「あなた御用があるでしょう? 私暇

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1926(大正15)年2月号

底本

  • 宮本百合子全集 第二巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年6月20日