「おや、時計がとまっているでないか」 母親の声に、ぬいは頭をあげ、古い柱時計を見上げた。 「ほんによ」 「いつッから動かねえかったんだか——仕様ないな、ぬい、若えくせにさ、お前」 「だって母さん、耳についちまっているから判んなかったのさ。ほら——聴いてお見、カチカチ云ってるようだろ?」 杏(あんず)の若葉越しに、薄暗い土間にまで日のさし込む静かな午後であった。 「早く巻