いったとはは |
一太と母 |
冒頭文
一太は納豆を売って歩いた。一太は朝電車に乗って池の端あたりまで行った。芸者達が起きる時分で、一太が大きな声で、 「ナットナットー」 と呼んで歩くと、 「ちょいと、納豆やさん」 とよび止められた。格子の中から、赤い襟をかけ白粉をつけた一太より少し位大きい女の子が出て来る、そういうとき、その女の子も黙ってお金を出すし、一太も黙って納豆の藁づとと辛子(からし)を渡す、二人の子供に日がポカポカ
文字遣い
新字新仮名
初出
「女性」1927(昭和2)年1月号
底本
- 宮本百合子全集 第三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年3月20日