じんちょうげ |
沈丁花 |
冒頭文
はる子は或る知己から、一人の女のひとを紹介された。小畑千鶴子と云った。千鶴子が訪ねて来た時はる子は家にいなかった。それなり一年ばかりすぎた後、古びた紹介状が再び封入して千鶴子から会いたいという手紙が来た。はる子はすぐ承諾の返事を出した。先(せん)始めて来た時留守にしていたまま挨拶もしずにしまった。それを思い出したのであった。 初対面のとき、はる子は千鶴子の神経質そうな顔立ちを眺めながら
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸春秋」1927(昭和2)年2月号
底本
- 宮本百合子全集 第三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年3月20日