あかるいかいひん |
明るい海浜 |
冒頭文
一 陽子が見つけて貰った貸間は、ふき子の家から大通りへ出て、三町ばかり離れていた。どこの海浜にでも、そこが少し有名な場所なら必ずつきものの、船頭の古手が別荘番の傍(かたわら)部屋貸をする、その一つであった。 従妹のふき子がその年は身体を損ね、冬じゅう鎌倉住居であった。二月の或る日、陽子は弟と見舞旁(かたがた)遊びに行った。停車場を出たばかりで、もうこの辺の空気が東京と違うのが感じら
文字遣い
新字新仮名
初出
「週刊朝日」1927(昭和2)年6月15日号
底本
- 宮本百合子全集 第三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年3月20日