三等の切符を買って、平土間の最前列に座った。一番終りの日で、彼等の後は棧敷(さじき)の隅までぎっしりの人であった。一間と離れぬところに、舞台が高く見えた。 やがて囃(はやし)が始り、短い序詞がすむと、地方(じかた)から一声高く「都おどりは」と云った。 「よういやさ」 揚げ幕の後で一種異様にちりぢりばらばらのような刺戟的な大勢の掛声がそれに応える。同時に、左右の花道から、鼓、太