佳一は、久しぶりで大岡を訪ねた。 不在で、細君が玄関へ出て来た。四五日前からシネマの用事で京都へ行っているということであった。 「そうですか、じゃまた上ります。おかえりになったらよろしく」 再び帽子をかぶりそこを出たが、佳一は、そろそろ貸ボートなど浮かび初めた牛込見付の初夏景色を見下したまま佇んだ。 大岡は、ああいっていたって、本当に京都へ行ったのかどうか解りはしな